遊びに来た土地が、いつのまにか故郷になる 松井 香楠子さん

遊びに来た土地が、いつのまにか故郷になる

2018年取材

プロフィール
松井 香楠子さん 出身 / 東京都 職業 / 南砺市地域おこし協力隊

遊びに来た土地が、いつのまにか故郷になる

松井 香楠子さん

 南砺市を知ったきっかけは、2016年4月に東京都武蔵野市で行われた武蔵野市と南砺市の友好都市交流イベントに参加したことです。南砺の食材を使った郷土料理を食べながら、南砺での暮らしぶりを聞いて興味を持ちました。その時仲良くなった南砺の人から、「山菜採りにおいで!」と言われ初めて南砺市を訪れました。

 おばあちゃんが長野に住んでいて自然に触れる機会は小さい頃からあって、その頃の夢が「山に住んで自分の家を持つ」というほど田舎には興味がありました。
また、元々ものづくりをしていて、創作時に音もでるので人里離れた所に住みたいという思いがありました。東京では往復4時間かけてシェアアトリエに通っていました。それが大変で、住む場所と創る場所は同じ場所がいいなと思い始めていました。そこで、飛騨や青森の環境を見に行ったこともありましたが、しっくりこなかったんです。

 それが、5月に南砺市に誘われて訪れ、山が緑でその中に藤の花が咲いているのを見たときに「この場所に住みたい!」と直感で決めました。山菜をとる体験をする中で、地元の人が受け入れてくれるあったかい感じがとてもうれしかったです。明るく迎えてくれているなと感じました。

 それからは、まずは四季の気候・環境を感じるため、3、4回南砺市に通い、住む場所や生活環境を見に行ったりしました。10~12月には長期間滞在し、自動車学校にも通いました。南砺市に来る度に居心地がよくなっていきました。
東京と南砺市を行き来する間に、所有者が取り壊す予定の古民家を紹介してもらい、立派な家で取り壊すのはもったいない、自分が住みたいと思ったのが今の家です。この場所は周囲の自然がとても豊かですが、金沢駅から車で30分という立地なので東京にも帰りやすいです。たった30分で景色がガラリと変わり四季が目に見えて面白いです。 

 車の免許もとり、家も見つかり、もう南砺市に移住しようと思ったときにちょうど地域おこし協力隊の募集を見つけました。そして、2017年3月に引越し、移住しました。

 古民家の中には荷物が残っており、家を手に入れるまでは少し時間がかかりましたが、この古民家も1年くらいかけて大工さんの手も借りながら自分の手で改装し、2018年8月から住み始めることができました。
今は、移住するうえでいろいろと相談にのってくれていた地元の方と結婚し、この古民家で一緒に暮らしています。

 生活するうえで不安なことは、医療機関の選択肢が少ないことです。これから子育てのことを考えると、開業医はいるけど市内の大きい病院に非常勤の先生しかいないので、近隣の市に行かないといけないこともあるかもしれません。

 また、東京だと夜遅くまでやっている飲食店が多くて食べるものの選択肢も多いですが、ここでは飲食店の選択肢が少なくて、食べたいと思ったものは自分で作ることが多いです。南砺にはおいしい食材がそろっているので、それを使って料理をするのが楽しいです。

 結婚もしたので、協力隊の任期後も南砺市で暮らし、今住んでいる湯谷という集落を盛り上げていきたいと思っています。先日は、この古民家でインドの楽器で演奏会をしたり、真打の方を呼んで落語会を開催したりしました。地元のおばあちゃんから東京の友達まで幅広い年代の方が集まってくれて、家も喜んでいるのを感じ、「ここがもっと人の集まる場所にしたい」と思いました。自分の石彫や陶芸の作品制作や体験教室ができる場にもなればと思っています。人が集まって、のんびりできる場になるのが一番ですかね。いろんな人が行き交う交差点のような場になればいいと思っています。